いつかの現在地

2019/8/30引越し

自分に宛てた言葉

完璧な大人なんていない。
それは理想の中のさらに架空。

どんな偉人だって人格者だって、ある分野においては無知で、偏見や決めつけを持っている。




全部を分かってて圧倒的な高さから自分を見降ろしている。

こちらが何を言ってもまるで届かず、決して揺らぐことのない、そんな大人は実際にはいない。

それはたくさんの知識があるということではない。

知らないことはあっても、それがどういうことなのか、どういう意味をもたらすのかが分かっている、ということ。


いつの間にかそんなものになろうとして。


そんなこと無理に決まっていて、やっぱり無理だった。








ただ、あの高校生の自分が、そばにいて欲しいと願った「そいつ」になろうと。



自分のことでいっぱいいっぱいの周りの大人たちに、怒りや憎しみを抱えながら、

そこは確かに一つしかない自分の家で、大切な人たちである彼らを切り捨てることもできず、
ばらばらになっていくみんなを繋ぎ止めようと奮闘する。


周りの同年代の人たちは部活やバイト、恋人、カラオケやボーリング。

友達の誘いをへたくそな言い訳で断って、家に帰ればギリな大人の緩衝材。
比べずにはいられない。なんで自分ばっかり。
そんな自分を叱る。そんなことを考える自分が弱いのだと。
枕を殴って罪悪感に浸る。下から自分を呼ぶ声がする。元気に返事をする。



うまくいかない。大人たちは歩み寄らない。解決はしない。

なのにみな僕を普通の高校生のように扱う。
だれも僕の頑張りを知らない。僕の気遣いを分かってくれない。自分のしてることが正しいのかも分からない。この苦しみを分かってくれない。

なんで僕が…。だれか聞いてよ…。

暗い部屋のなかで独り泣いている。




気付かないうちに、

あの時の自分が、こんな人がいてくれたらいいのに、と願っていた「そいつ」になろうとしてきた。
こんな人が近くにいたら、と願っていた。



ただ、頑張ったね。大変だったね。と言ってもらいたかっただけ。


そいつになろうとしてただけ。



でももうあの子にその言葉をかけてあげることはできない。


その理想の中の架空は、自分では間に合わなかった。


なのにまだそこへ向かってる。

無理なのに向かってる。今も。



今、それを止めるかどうかが、最初の、そして決定的な、分岐。