いつかの現在地

2019/8/30引越し

過去8


そんなに熱心に勉強できないのは、あまり大学に行く気がないからだろう。
勉強していろいろなことを知って、周りの友達たちと一緒になって受験勉強をしているのは面白い。しかし、志望の大学に行きたいといった思いはほとんどなかった。そんな自分を甘い奴だと思っていたし、こんなことで合格出来るわけがないと分かっていた。
それでも一日何時間も勉強し続けるなんてことはできなかった。


勉強してないわけではなかったが、ずっと勉強しているわけでもなかった。

すでに進路が決まっている中学の同級生の誘いで初売り巡りにお供したり、再び遅れ気味になっている日記を片づけたり、従兄弟たちと百人一首で競ったりと、そんな調子で正月は過ごした。


冬休みが明けて、いよいよ本番が近付いてきた。
 
毎日の模擬問題の結果も、現実味を帯びたものになってくる。センター試験が終わった後は、それぞれ勉強する範囲がバラバラで、私立大学の試験をいくつも受けに行く人や、すでに合格が決まっている人など様々であるので、二週間に一回あるホームルーム以外は、学校には来ても来なくても良いということになっている。
つまり、学校での授業はセンター試験まででおしまいだ。

隣の友達の描く奇妙な絵を見て笑ったり、下らない話をしてうるさいと先生に怒られる。自分にとって本当に幸せと思える時間だった。

そんなホームルームの時間ももう終わる。それが寂しかった。


センター試験前日


授業は午前中で終わり、皆来たるべき明日に備えるため帰っていく。
放課後、いつものメンバーが自分の席の周りを囲み、あーだこーだと言い合っている。唯一、自信がある生物の要注意なポイントをみんなに力説して教えた。
後になってから、これで自分の点数が低かったらすごくダサいなと気付いた。自分程度の実力で人に教えるなんて何やってるんだろうと後悔した。それでも、みんないい結果になったらいいなと思った。


当日。

おそらく人生の中で最初で最後。センター試験が始まった。