いつかの現在地

2019/8/30引越し

日記6

4月29日

突然何の意欲も無くなった。

それまでは漠然と見えていた未来、球技大会、テスト、学校で弁当を食べながら友達と過ごす時間、学園祭、読みたい本、それら全部がもやもやに隠れてしまった。本当に隠れてしまった。頑張れと言われても、頑張れない。頑張ることに頑張れない。軽く死ねそう。やっぱり消えてなかった。確実に蓄積されていた。
日記に思いを吐き出してそれで何とかなると思ってきたけど、その日記も書くのが追いつかなくて半年前から止まってる。写しきれてない叫びや思いが携帯電話の中に未送信メールとなってたまっている。少し一人になっていれば気持ちは冷めて、爆発もせずにここまで来れた。でも、やっぱり少しずつ残っていたみたいだ。本当にごっそり抜け落ちた感じだ。もう、全部言ってもいいんじゃないの。ちょっとは示しといたほうがいいんじゃないの。
……できない。時間が経つとやっぱりなんとかなるんじゃないかって思う。蓄積されてるのにね。ほら、今までだって言わなかったから、何が言いたかったのか分からなくなってきた。多すぎて。いつもの自己分析もできなくなってるし。これは本当にやばいのかな。そうは言っても、何にも言わずにおけば、いつもみたいに過ぎていくじゃん。確かに、僕も何とか受け流せたなとか、うまく吸収できたな、とか思ってたよ。でもこんな状況になった。ダメージは繰り越されてた。さっきまでなんとなくテレビ見て笑ってて、元気に発音しながら英文法やってたのに、いきなりこんな抜け落ちて、いつでも死ねるような状況になっちゃうなんて自分でも驚いてる。さっきまであんなに普通に元気だったのに。いつもは、あそこにあんな道があるなって確認してただけなのに、今はいつでも歩いて行ける。ホントに死んじゃうかもな。考えたこともなかったのにな。ごめんな。



4/30


午後、後ろにいつもの罵声を聞きながら死ぬ気でふらふらと外出した。先日の体育でケガした足が痛くて実際にふらふらとした足取りだ。足はかなり痛んで引きずる感じになっていたが、家にいられもせず、出て行く他なかった。なんかもう適当に金遣いまくろう。欲しいもんとか買って全部使っちゃおう。そうだ、一人でカラオケ行ってなんか歌いまくろう。と、財布を開けたら450円。…漫画でも買おう。本屋へ向かう途中、近所の高校の生徒たちとすれ違ったが、いつもみたいな引け目みたいなのは感じず、小さい歩幅でのろのろと歩いた。彼らにはこれから死ぬ人間に見えただろうか。

思っていた以上に歩くスピードが遅く、疲れてしまったので近くの神社の石の上に座って休んだ。4月下旬とは思えない暖かい風に吹かれて、自然と、いつもやっているように、自分の今の行為の意図を考えた。そして、自分のあまりにありきたりな気持ちに気付き、一人苦笑した。ただ単に、自分のこの行為に対する家族の行動や表情を考えている自分の期待や想像を伝っていったら、なんとまぁ、僕は彼らが自分を心配することを期待して想像していた。単純に、心配されて、必要とされていることを確認したいだけだった。がっくりきた。なんだ、そんなんかよ。ただ、心配してほしかっただけ。恥ずかしくなると同時に、いろいろと気が抜けた感じがした。結局立ち読みしただけで、2時間くらいで家へ帰った。とても人には言えないような恥ずかしい理由だったとしても、自分が本当に死ねる、自分を殺せる状況にあったことに対する静かな恐怖と、落ち着いた危機感を感じた。

そして今こうして夜一人になって思い返している。なぜそんなことになっていたのかは書く気はない。というか、でか過ぎて書けないだろうし、まとまらない。ぶり返すかもしれないし。だから頑張って自分で思い返してね。そうだな、超簡潔に、いろいろ省きまくって言うと、「ただ仲良くして欲しいだけなのに。家族が嫌いになっていく。家族を嫌いになる自分をもっと嫌いになる。どうせ僕が異常なんだ。分かってる。でももういられない。」って感じ。

とにかく今は、ゲームオーバーの主人公から脱した。多分。いや、絶対にだ。絶対に自殺なんかするもんか。んなことするくらいなら言ってやればいいんだよ。そう思っただけでも、スッと軽くなった。割り切ったのか、何なのか良くわからないが、また自分を取り戻せたようだ。別に失っていたわけじゃないが、失ってもいいと思う人間になっていたんだから、失っていたようなものだ。あれも、ただ、しょげ込んで、もう疲れたと、いい加減にしろよと、表したかっただけかもね。さて、明日は学校もあるしもう寝ようかな。市立図書館もやってるし、なんか本の予約でもしようかな。
またブルーになるかもしれないけど、こうやってなんとか時間を稼いでいけば、なんとかなるって。大学行くんだろ?頑張ろうよ。




その出来事がひとつの区切りになったのか。全然なっていないのか。いまいちよくわからない。

相変わらず祖母と祖父の言い争いは日常だったし、再開された日記には自分の思いを何度も吐き出した。自分の中に起こった気持ちも意見も、その場のベストを考えてそうすることが必要だと思えば、黙って押し殺した。ただ、その時のような自殺志願状態になることはなかった。