いつかの現在地

2019/8/30引越し

『夢』




きっかけは何だったのかわからない。

ただ、日曜夕方の少しトラックの多い帰り道の高速道路。気付いた。思い出した。


4年間も続けてて初めて自分が納得できる歌声が出せたカラオケだったか。
兄と二人で見に行ったホタルだったか。
変な奴って思われるかなって思いながら投稿したクワガタの写真だったか。
素直にかっこいいと思ったスマホゲームの新曲だったか。
久しぶりに立ち寄って新鮮な気持ちがした本屋だったか。
欠員だらけの変則勤務の中で奮闘する妹の姿だったか。

きっかけが何だったのか分からない。




いつから僕は諦めてしまっていたんだろう。

いつから、「今あるもの」だけで、進もうとしてしまっていたんだろう。


あんなにも、「より良く生きる」ことを掲げていたのに。

過去の自分のためにも、今まで出会った全部のもののためにも、って思いが
いつの間にか、手持ちの燃料で行けるとこまで走るだけの何かにすり替わってしまっていたんだ。



ひとの歌に感動して、誰かの話に感動して、誰かの話に動揺して、

まるで逃げるように、他人なんかよりも自分の生き方を、自分の在り方でって。


いつから、僕は「送る」だけの人になってしまっていたんだろう。
いつから、僕は「残す」だけの人になってしまっていたんだろう。

諦めてるだけの、優しさで。
欲しくないだけの、大人な対応で。




いや、知ってるよ。

本当は、欲しいものなんてないんでしょう?


「おいしいものを食べたい!」って気持ちも
「酒飲んでわいわい騒ぎたい!」って気持ちも

本当は、我慢してるんじゃなくて、遠慮してるんじゃなくて



おいしいご飯、行きつけの飲み屋、ブランドの服、ちょっと高い財布、上司からの評価、職場の女の子、毎日の中にあるあれやそれ。

お金がないからじゃなくて、一人が好きなわけでもなくて、


「ない」

ないんだ。
実は本当はそんなに欲しいと思ってないんだ。



知ってるよそんなの。

欲しがってるように見せているだけ、望んでいるように見せているだけ。
ときどき嘘がばれそうになって。

みんなが欲しがってるその気持ちが本当は分からなくて。


だからときどき生きるのがしんどくなって、合わせることに疲弊して、
嫌なこととか、辛いこととか、立ち向かうだけの原動力が「自分」にはないんだって。


嫌なこととか辛いこととかは同じくらいにあるくせに、欲しいものはないだなんて、あんまりにもハンデが大きすぎるんじゃないかって。




「あるもの」で進む力は必要だ。「諦めること」も必要だ。

限界も天井も確かにある。出遅れも手遅れも絶対あるんだ。




だからって、どうしてやめちゃったんだろう。

そんなことずっと前からから分かっていたじゃないか。


前に進む他人の姿に感動して、諦めない誰かの物語に感動して、誰かの歌詞に、誰かの言葉に、誰かの、誰かの、誰かの

「自分」はどうしちゃったの。「自分」はどこ行っちゃったのさ。



「ひととは違う」は、逃げるための呪文じゃなかったはずなのに。

「ひとの評価なんて」なんて言って、いつでも逃げられる恰好のまま立ちすくんでいたのは、不安でたまらなかったのは、ホントに何もしていなかったからだ。

それだけだった。



自転車にも乗れなかったくせに、漢字も英語も読めなかったくせに。

足のつかないプールで手を離されそうになって涙目になって、
人前で喋るのが怖くて、なのに生徒総会で一人立たされて、トイレの個室で何度も何度も、たった3行の原稿を何度も何度も、

臆病で、自信もなくて、それでも

テスト前日に往生際悪く日付が変わるまで勉強してた自分はどこ行っちゃったんだろう



なんでそんなにラクしようとしてたの。
なんで頑張ることやめちゃったの。

なんで、諦める前に始めることすらしなくなっちゃってたの。



不安になってるくらいなら、やればいいだけなのに。

それ、そんなに難しいことなの?
じゃあなんでどうしてやんないの?

やんなくても誰にも怒られないし、言い訳も逃げ道もあるし。


ひとに託して、任せて。
それ見て、すごいね!かっこいいね!って

いや、自分も歩けよ。進んどけよ。






どれくらいの間、立ち止まってた?

無駄とは言わないよ。
手にしたものだってたくさんあるもの。でも、そこじゃないんだ。てっぺんは。

本当はもうちょっと行けるんだ。
自分の価値は、自分の意味は。それだけじゃないんだ。



行こうよ。
進んでから、また続けようよ。


本当は「欲しい」って思ってないし、「望んでも」いないって。

それ
むしろ、時間もお金も、ひとよりいっぱいあるってことじゃんか。


ひととは違う?
自分にはない?

あーいいよもうどっちでも。



もったいないって。


助けたいって、支えたいって、応えたいって、

嘘じゃないよ。それはホントに嘘じゃないんだよ。

でも、そんな弱々しい力で誰の手を引けるのさ。
明日生きる気もないやつの言葉に誰が耳を傾けるのさ。


せっかく願ったのに。それまで嘘にしないでよ。





人が羨むような何か、笑っちゃうような何か、温かいと感じてくれた何か。

もしあなたが私にそう感じてくれた何かは、今まで全部のおかげなんだよって。


今まで全部の自分と自分に関わってくれたひとものこと音色景色があるからこの自分があるんだよ、って今の自分だけで示せるような。


そんな在り方を。



いいよずっと未完成で。

志半ばで全力のドロップアウト。いいよ、初めから歩いてないよりずっといいよ



そして、残そうよ。送ろうよ。

今いるこの自分には、実はまだそれだけの可能性があったりする可能性があるんだから。









決意とか分岐点とか、そんな仰々しいものじゃなくて。

今日はいつもの明日仕事の日曜日。